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今回の日墨FTA実質合意の特徴的な点について、いくつかご紹介させて頂きます。 (日墨FTA合意概要も併せてご参照下さい)
(1)農林水産物
今回の合意では600品目を超える農林水産物についての実質的な関税の撤廃等の約束が行われました。
最後まで残った5品目(豚、鶏、牛、オレンジジュース、オレンジ)以外にも、数多くの野菜(かぼちゃ、ブロッコリー、アスパラなど)、果物(マンゴー、アボガド
など)の有税品目について、日本は関税撤廃を約束しました。
(2)鉱工業品
日本側においては、極めてセンシティブである皮革・履物のうちのかなり多くの品目を含め、関税撤廃を約束いたしました。
メキシコ側は、国内産業との関係で最も難しかった鉄鋼製品についても例外なく10年間で関税を撤廃すること、自動車の無税輸入枠を設け7年後には完全自由化する
などの約束をしました。
これによりまして、鉱工業品については双方ともほぼ全て(貿易額でも99.9%以上、品目数でも99%以上)について関税撤廃が実現することになります。
GATS(WTO協定附属書1B・サービス貿易に関する一般協定)の約束表においても、日星EPA(02年締結・発効)においても、日本はこれまでポジリスト (自由化する分野のみ記述する)方式しか経験したことがありませんでしたが、日墨FTAにおきましてはNAFTA型のネガリスト(原則自由とし、自由化しないものにつ いて規制の内容を明記する)に踏み切りました。ポジリストではどのような内容の規制がどのような根拠で行われているのか明確でないとの欠点を、ネガリスト化によっ て克服したわけです。
メキシコの政府調達は年間1兆円弱ですが、電力庁や石油公社への入札案件で大規模なものに日本の企業が全く参入できない事態が続いていました。これは、平均16
%の関税負担によって応札額が欧米企業よりも大幅に割高になり太刀打ちできなくなったこと、メキシコはFTA締結国の企業とFTA締結国でない国の企業を政府調達にお
いて差別するとの制度の運用を昨年から強化し、応札さえできないケースが増大したことによるものです。(欧米には、94年のNAFTA、00年のEU・墨FTAあ
り)
今回の合意では発電機用のタービンの関税が即時撤廃されることも含まれ、これと政府調達関連規定によって、FTAの実施以降は日本企業の不利が解消されることにな
りました。
これは日星EPAや他のFTAにもない新たなタイプの条項です。
輸出企業は関税が最大の興味の的ですが、メキシコには既に300社以上の日本企業が進出して活動を行っており、そうした企業が日々感じるビジネス上の問題点を改
善するための協議の仕組みを作ることが合意されました。
かつて日本がSII(構造問題協議、89年〜)で米国からいろいろと注文を付けられたことがありましたが、SIIのように米国から日本が一方的に押しつけられた
といった印象があるものではなく、現に活動している企業が活動しやすくすることは、結果的にメキシコにとってもより多くの投資を引きつける魅力を持つことになる
とから、メキシコ側もこうした協議機関の設置に合意しました。
この中では、メキシコの治安の問題、都市環境の問題、労働法制の問題、行政手続きの不安定性の問題などが議論される可能性があります。
こうした仕組みはメキシコに留まらず、日本からの進出企業の多いアジアの国々との間でも有効に機能する可能性があり、今後のアジア諸国とのFTA/EPAに影響
を与えるものと考えられます。
今後、条文の技術的な詰めが行われ、できれば2ヶ月程度で署名、その後双方で国会での承認手続きに入り、早ければ来年の協定発効を目指して作業がすすめられていく 予定ですが、早く協定が実施され日墨両国にとって利益がもたらされ、また、アジア諸国とのFTA/EPAをも加速することが期待されます。