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広報委員会

第98回アカデミー賞レポート

◎映画「国宝」、惜しくも受賞逃す =ロシアの愛国教育がドキュメンタリー賞

 

  

広報委員会を担当しています、時事通信社の岩嶋です。3月15日、ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催された第98回アカデミー賞授賞式を取材してきましたのでレポートします。


◇歌舞伎の化粧は馴染みなし?

今年のアカデミー賞では、日本の作品として初めてメイクアップ・ヘアスタイリング賞にノミネートされた、吉田修一さんの同名小説が原作の映画「国宝」(李相日監督)の受賞がなるかが注目されていました。上映時間3時間弱と長編ですが、日本国内の興行収入は200億円を超え、興収ランキングで日本の実写映画歴代1位。私もレッドウッドシティの映画館で上映していたので観てきましたが、主演の吉沢亮さんとライバル役の横浜流星さんが歌舞伎の女形を演じる姿が圧巻でした。


ただ、「国宝」は惜しくも受賞を逃し、同賞にはオスカー・アイザック主演の米映画「フランケンシュタイン」(ギレルモ・デル・トロ監督)が輝きました。過去の受賞作を見ると、「フランケンシュタイン」と同様に、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)や「ロード・オブ・ザ・リング」(2001年)など、特殊メイクの技巧が評価された作品も多く、日本国外では馴染みのない歌舞伎の化粧はなかなか理解を得られなかったのかな、と感じました。


◇流れ星の代わりに爆弾が

今年の受賞作で特に注目したのが、長編ドキュメンタリー映画賞の「Mr Nobody Against Putin(邦題:名も無き反逆者 ロシア 愛国教育の現場で)」(デビッド・ボレンスタイン監督とパヴェル・タランキン監督)です。2022年にウクライナ侵攻が始まった後、プーチン政権の意向により、ロシアの学校現場に愛国主義的な教育が押し付けられる様子を生々しく描いた作品です。


主人公は、共同監督を務めるパヴェル・タランキンさん本人。ウラル山脈近くの小さな鉱山町カラバシュの小学校で教員を務めていたパヴェルさんが2年間に亘ってカメラを回し、2024年に密かにデンマークのプロデューサーと連絡を取って国外脱出。上映にこぎつけたという作品です。


ごく普通の小学校の日常に、突如軍隊式の行進が持ち込まれたり、教員が戦争を賛美し愛国心を要求するイデオロギーを教え込むよう強要されたりと、異様な光景が印象的でした。また、教員として児童にそうしたことを教えなければならない苦悩や、自由にものを言えなくなる閉塞感がパヴェルさんの視点で痛々しく伝わります。


授賞式にはそのパヴェルさんが登場。「4年間、大切な願い事のために空を見上げ、流れ星を探しました。でも、世界には流れ星の代わりに爆弾とドローンが落ちてくる国があります」と述べ、すべての戦争を今すぐ止めるよう訴えました。また、ボレンスタイン監督の「無数の小さな(政府への)加担行為が自分たちの国を失わせることにつながる」との言葉にもうなずかされました。


ちなみにパヴェルさんは授賞式の後、ロシア政府から欧米のスパイを意味する「外国の代理人」に指定されます。媒体は違いますが、報道に身を置く立場として、政府の弾圧の恐ろしさを感じました。(了)


©2020 by Japanese Chamber of Commerce of Northern California. 

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